お盆は恋色

第一話 二人きりのデート

▼cast

内藤 幸大(ないとう こうだい)...元気で無邪気な18歳男。


上田 陽愛(うえだ ひな)...4年前に死んだ幸大の彼女。さみしがりやで泣き虫。

▼story

真夏のお盆、死んだ人の霊たちは故郷に帰還する。今年も、何人もの霊が帰って来た。

そんな中、幸大のもとへも、死んでしまった彼女の霊が帰ってくる。



▼本編


幸大"君が亡くなって、もう4年の月日が過ぎた。そう。今日は君が亡くなって4回目の夏。お盆がきた。今年も君は..."


陽愛「ただいま。」


幸大"帰って来た。"

「おかえり。陽愛」


陽愛「ねぇ?幸大。元気にしてた?」


幸大「うん。陽愛は?」


陽愛「気分的には元気..かな。」


幸大「そっか。どっかいく?」


陽愛「久しぶりに海行かない?」


幸大「クスッお盆に海いくのは危ないって、あれだけ言ってたのに?」


陽愛「そうだけど..ほら。こっちに帰ってこれるの、お盆だけだし。」


幸大「そうだね。行こっか。」


陽愛"そのあと、私は幸大と海に行った。誰も居ない海。二人で腰を落として砂浜に座って笑いあった。"


幸大「昔は、よく二人でこうやって海にきたよな?」


陽愛「クスッそうだね。あ、みてみて!カニっ」


幸大「ほんとだ!ほっ!ほっ!(カニを捕まえようとする)」


陽愛「捕まえようとしたらハサまれるよー?笑」


幸大「大丈夫だって!ほっ、...ああ!いってぇ!」


陽愛「ほらほら。言わんこっちゃない..笑」


幸大「だってよぉ?昔もカニ、捕まえてやれなかったから..今度こそ!て思ってさ。」


陽愛「ふふっ。昔もカニに..」


幸大「ハサまれましたー..笑」


陽愛「あははっ。昔と全然変わんないねっ笑」


幸大「はいはい。俺はどーせダサダサ幸大ですよー..」


陽愛「でも、幸大のそうゆうとこ、可愛いくて好きだけどなぁ。」


幸大「ん、バーカ。お世辞言っても何も出ねーぞー?」


陽愛「えー?期待したのに。」


幸大「えぇ..お世辞かよ..笑」


陽愛「うーそっ!本当に、幸大のそうゆうとこ、好き。」


幸大「..俺は可愛いくねーから。」


陽愛「ふぅん。じゃあ私が勝手に可愛いって思っとく♪」


幸大「まったく..笑、否定してもすぐそう言うんだからさー」


陽愛「クスッだって、可愛いんだもん。」


幸大「はいはい。あ、なぁなぁ。陽愛、貝殻好きだったよな。」


陽愛「うん。好きだよ。綺麗だもんね。」


幸大「じゃーんっ!」


陽愛「..!何これ。」


幸大「さっきカニ捕まえようとした時に見つけたの。」


陽愛「クスッ綺麗。」


幸大「な?俺、成長しただろっ」


陽愛「努力だけは認めてあげる。(笑)」


幸大「はー?俺見直すかなーって思ったんだけどなー」


陽愛「うん。」


幸大「...陽愛?どーかした?」


陽愛「ん、ううん!大丈夫..」


幸大「本当に大丈夫か?気分でも悪いのか?」


陽愛「大丈夫だって!気にしない気にしないっ!」


幸大「んー...陽愛、帰ろ。」


陽愛「嫌..」


幸大「気分悪いことくらい分かるから..!帰るぞ。」


陽愛「大丈夫だから!」


幸大「でもっ...」


陽愛「嫌なのっ!!」


幸大「陽愛....」


陽愛「ほら..せっかく海に来たんじゃん..。」


幸大「そうだけど..」


陽愛「まだ帰りたくない..もっと幸大と海にいたいよ..」


幸大「でも、心配なんだよ。」


陽愛「ん..どうしても、だめ?」


幸大「また来れるだろ?海くらいさ。」


陽愛「海くらい..」


幸大「え、?」


陽愛「海くらい..なんかじゃないよ。一年にたった一回。幸大と来る海..私にとっては特別なの。」


幸大「でもさ、俺は陽愛の体調が心配だからさ。俺の家に帰ろ?」


陽愛「うん..そうだよね。ごめん。」


幸大「ん、ほら。いこ。背中乗りな。」


陽愛「うん。..ごめんね?」

"ただ、帰る時のこと、考えちゃっただけ。また一年、幸大のいない毎日を過ごさなければいけない。そう思うと、胸が苦しくなった。神様も、天使達もみんな、天国は楽園だなんて言うけど、大切な人、大好きな人がいない。そんな場所のどこが楽園だなんて言えるんだろう?"


幸大「大丈夫か?陽愛?」


陽愛「幸大...」


幸大「ん..どうした?」


陽愛「好きだよ..」


幸大「..うん。」


陽愛「..陽が落ちちゃう..」


幸大「..うん。」


陽愛「帰りたくない..帰りたくないよ..幸大がいない毎日なんて..もう嫌だよ..」


幸大「陽愛..泣くなよ..俺まで辛くなるじゃんか..。」


陽愛「こんな気持ちになるくらいなら..お盆なんて、無ければいいのにな..」


幸大「陽愛..」


陽愛「そしたら、..お盆が無かったら..幸大と一緒にいられる..そんな期待、しなくても済むのに...」


幸大「陽愛..!」


(陽愛、消える)


幸大「陽愛..」

"それからというもの、俺は天国の陽愛に手紙を書き続けた。届いてるかも、読んでくれてるかも分からない。だけど、何もせずにはいられないから。"



幸大[天国の陽愛へ。

陽愛、あの日、陽愛はお盆なんて無かったら良いのに。って言ったよな。俺は、お盆に感謝してる。

死んでしまった陽愛に、また会うことができる。

一年に一回のデートだったとしても、俺にとっては幸せな時間で。

確かに、天国に帰る陽愛は悲しいと思うし、寂しいんだと思う。

だけど、俺だって、陽愛と別れるの、悲しいし、寂しい。

だけどさ、その悲しさや寂しさに負けないように俺は陽愛を想い続ける。

なぁ。この手紙が届いているのか分からないけど、来年も帰ってきてくれるよな?

俺、待ってるから。きっとこいよな!

そんで、今度こそ、カニ..きっちり捕まえて、俺のこと、惚れ直させてやっからよっ。]


陽愛「読んでるよ..幸大。お手紙ありがとう。

そうだね。悲しくても、寂しくても、また来年、あなたに会える。

弱音吐いてちゃ駄目だよね。

クスッ幸大らしいけど、カニ、本当に捕まえられるかなぁ?

そんなことしなくたって、私は幸大にベタ惚れだっつーのっ!

..また来年、きっと...きっと行くから。また会おうね。

会って、また真夏の暑い空の下、たくさん二人きりの時間を過ごしたい。

それまで頑張ろう。大好きな君と同じ空間に居られるその時まで。

さようなら。」