お盆は恋色

第二話 空白の時間 陽愛編

▼cast

上田 陽愛(うえだ ひな)...4年前に死んだ女の子。泣き虫で寂しがりやだが、しっかりもの


三浦 亮(みうら りょう)...1年前に死んだ男。過去や現在に闇を抱え1人で悩んでいる


天使...天国で暮らす天使(性別不問)


南 鈴(みなみ りん)...亮の生きていた時の彼女。


※天使と鈴は、極端に台詞が少ないです。1人2役でも出来る2役なので、1人2役を入れるのなら天使と鈴の1人2役を推奨致します。

▼story

お盆から4ヶ月後、天国で陽愛は1人の男と出会う。死んでから1年目だと言う男の悲しい顔。陽愛は放っておけない。



▼本編


陽愛"お盆が過ぎて4ヶ月程になるだろうか。天国では相変わらずゆっくりと時間が過ぎていた。天使達とお話をするのも楽しいし、私と同じ亡くなった人達の話を聞くのも好き。そして何より幸大からの手紙は、私を励ましてくれる。"


亮「こんにちは?」


陽愛「え、あ..こんにちは。」


亮「何してるの?」


陽愛「んー。特に何も。」


亮「暇..ですよね。」


陽愛「そうですね。」


亮「僕は、三浦 亮。君は?」


陽愛「上田 陽愛。」


亮「陽愛か。死んでからどれくらいたつの?」


陽愛「4年くらい。」


亮「4年?長いんだなあ。」


陽愛「そうかな?」


亮「僕は、1年なんだ。」


陽愛「最近なんですね。」


亮「まぁね。」


陽愛「...。本当に退屈ですね」


亮「うん。あ、僕にはタメ口でいいよ!名前も、亮でいいから。」


陽愛「あ..うん。」


亮「せっかく会ったんだし、仲良くしようよ。」


陽愛「うん。ありがとう。」


天使「陽愛さーんっ!」


陽愛「あ、天使さん。」


天使「お手紙だよ。」


陽愛「ありがとう。」


亮「天使さん、僕には、?」


天使「ん?亮さん?んー亮さんのはねー。ないね!」


亮「...そっか。ありがとう。」


天使「いえいえ!」


陽愛「..誰かからの手紙を待っているの?」


亮「..まぁね。来るわけないけど。」


陽愛「...寂しいね。待ってるのに、来ないなんて。」


亮「まぁ、慣れてるから平気。それより、誰からなの?手紙。」


陽愛「あぁ、彼から。」


亮「彼から..ね。そっか。」


陽愛「...亮。」


亮「んー?」


陽愛「川にいこっか。」


亮「え?」


陽愛「あ、いや、本当は海が良いんだけど、ほら、ココ..海無いし?」


亮「クスッ。何それ。まぁ、いいや。いこっか。」


陽愛"彼を元気づけたかった。何だかすごく寂しい顔をするから。"


亮"彼..かぁ。この人には、4年たった今でも、手紙をくれる人がいる。...それに比べて、僕は..."


陽愛「ついた!」


亮「へぇ..。こんなところに川なんて、あったんだ。」


陽愛「うん!..よっと!」


亮「え、どこいくの?」


陽愛「んー?亮も中に入ってみなよー!冷たくて気持ち良いよ!」


亮「え、いや...。僕はいいよ。」


陽愛「いいじゃん!おいでよー!わっ!!」


亮「あぶなっ!!」


(亮が陽愛を抱き寄せる)


亮「っ...。」


陽愛「あ、ありがと..アハハ。(汗)」


亮「..この馬鹿!!はしゃぎすぎるんじゃねぇよ!」


陽愛「..ご、ごめんなさい。」


亮「あ、いや..ごめん。危なかったから。」


陽愛"しばらく沈黙が続いた。気まずい空気が流れ..川岸に座っている時間が、とても長く感じた。"


亮「..事故だったんだ」 


陽愛「..え?」


亮「彼女から、川に遊びに行きたいって言われて、一緒に行った。川の流れに足を取られた彼女を、僕は助けようとした。」


陽愛「え、。」


亮「一瞬の出来事だった。彼女は助かったけど、僕は、駄目だった。そのまま川に流されて、溺れたんだ」


陽愛「そんな..」


亮「最初は、それで良いと思ったし、彼女が生きてて良かったって思った。」


陽愛「うん。」


亮「でも、お盆に帰ったら、彼女は男をつくってた。しかも、僕のこと、気にもかけてくれない。墓参りにすら、来てくれなかったんだ。」


陽愛「....。」


亮「それから、どうやって天国に帰ってきたのか分からないけど、僕は今も納得できなくて..それで今日、僕の一回忌。...きっと、何もなく過ぎていくんだと思う。」


陽愛「...いくよ。」


亮「え?」


陽愛「いいから。走って!」


亮「な、なんだよ!?」


...━━━━━━━━━━━


陽愛「天使さん!!」


天使「はえ!?び、びっくりしたよぉ。どうしたの?陽愛ちゃん。」


陽愛「この人を、少しでいい。地上に下ろして!」


天使「ええ!。な、なにを言うのー?」


亮「え、いいよ。そんなの。」


陽愛「一回忌なの。どうしても行かせてあげたいの!!」



天使「ええ~?うう..じゃ、じゃあ、神様に許可を..」


陽愛「今すぐ!!」


天使「わぁあ..!わかったよぉ!!」


亮「...!」

"これって..。見える。懐かしい風景..。...やっぱり、いないじゃないか..。

..え?来た..なんで?"


鈴「亮ちゃん..一年間会いに来れなくてごめんね?私ね...亮ちゃんに心配させたく無かったの。ほら、いつも言ってたじゃない?"僕がいなきゃ、鈴は何もできないんだから"って..鈴は大丈夫!ちゃんとやっていけるよ..!亮ちゃん..大好き..!」


亮「...!!はぁ..はぁ..鈴..」


天使「ふぁあ..!神様に叱られたらどうしようううう..」


陽愛「どうだった..?」


亮「ちゃんと、来てくれた..。僕に心配かけたくなかったって..。鈴..鈴..!」


陽愛「クスッよかったね。勘違いだったんだもん。」


亮「ごめん..。ごめんな..疑ったりして..」


陽愛「私もね、彼のこと、幸大のこと..疑っちゃうこと、あるよ?」


亮「え?」


陽愛「この前、幸大..後輩の女の子に告白されたの。すっごく可愛い子。」


亮「...。」


陽愛「私ね、ああ、もう駄目なんだって思った。だって、私は死んでるんだもん。

そりゃあ、生きてる女の子と付き合わなきゃね~!って。思ってた。」


亮「うん..」


陽愛「でもね、違った。」


亮「ん..」


陽愛「彼は、寂しがり屋で泣き虫な私のこと、よく分かってた。私だけだよって、ちゃんと手紙くれたの。」


亮「..そっか。」


陽愛「亮の彼女さんも、亮のこと、よく分かってる。心配性だから、しっかりしなきゃって。」


亮「そっか..そうだよな。」 


陽愛「...形は違っても、恋人が死んだ後の人って、それでも死んだ恋人を想ってるんだよ。」


亮"それからというもの...僕はたまに天使さんに頼んで少しだけ鈴の様子を見せてもらうようになった。相変わらず手紙なんて来ないけど..鈴は僕が思ってるより強いみたい。ねぇ?鈴。幸せになれよ?僕がするはずだったのにもう出来ないけど、鈴は大丈夫だから。"


鈴"亮。元気にしてる?なんか、こうやって神様にお祈りするのって、本当に意味あるのか分からないけど、私、幸せになるからね?心配してないで、天国でお花畑でも駆け回ってなさいよっ!..クスッ大好きだよ。"


陽愛"はぁ、なんだかハラハラしちゃった。幸大..私、1つのカップルのキューピットしちゃった!

..ねぇ?今回のことで思った事があるの。幸大は、本当に私でいいの?死んでるのに、1年に一回しか会えないのに..。

私もね、側にいれないことが辛いの。この前も、不安もあったけど、半分は、これで幸せになってくれるのかなって、思ったくらい。

大好きだよ。愛してるよ。だけど...幽霊になった私なんかで、幸大に釣り合うのかなぁ..?"


end